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| 児童ポルノの根絶に向けた重点プログラムの策定について |
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警察庁生活安全局においては、児童ポルノが被害児童に与える影響の深刻さにかんがみ、警察が当面推進すべき諸対策を取りまとめることとし、別添のとおり「児童ポルノの根絶に向けた重点プログラム」を策定した。
警察庁においては、本プログラムに基づき、各種施策を推進していくこととしているが、本プログラムには、都道府県警察において取り組むべき事項も含まれていることから、貴職にあっては、本プログラムに基づき、関係機関等と緊密に連携しつつ、必要な取組みを重点的かた効果的に進められたい。 |
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児童ポルノの根絶に向けた重点プログラム
〜インターネットを利用した児童ポルノの拡散防止を焦点に〜
平成21年6月
警察庁
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〈はじめに〉
児童ポルノ等の児童の性的搾取は、言うまでもなく、児童の人権を踏みにじる行為であり、自分の力で自分の権利を守れない弱い立場にある児童に対する人権侵害は、特に容認できるものではない。中でも、インターネットを利用した児童ポルノについては、「児童ポルノは児童の性的虐待の恒久の記録にほかならない」(2008年G8司法・内務大臣会議総括宣言)といわれるように、その画像が一旦インターネット上に流出すれば、たとえ被害を受けた児童自身が保護されたとしても、画像のコピーが転々と流通して回収することが極めて困難となり、児童は将来にわたって苦しむこととなる。また、インターネット上の児童ポルノの氾濫は、児童を性欲の対象として捉える風潮を助長し、児童一般を他の様々な犯罪に巻き込む危険性を高めかねない。
特に、最近では、高画質の画像を高速大量な流通、被害児童の低年齢化、ファイル共有ソフト利用の拡大、新規画像の増加等の傾向が見られ、中にはリアルタイムで虐待画像を配信するサイトまで出現しているといわれており、インターネット上における児童ポルノ対策は、国際的な関心事項となっている。
「児童ポルノとの国際的な闘いの強化に関するG8司法・内務閣僚宣言」(2007年)、「性的搾取及び性的虐待からの児童の保護に関する欧州評議会条約」(2007年)、「児童の性的搾取を防止するリオデジャネイロ宣言と行動への呼びかけ」(2009年)、「児童ポルノ犯罪者によって脅かされる児童に対する危険性に関するG8司法・内務閣僚宣言(暫定版)」(2009年)等の相次ぐ採択は、児童ポルノの根絶に向けた国際的な機運の高まりを示すものにほかならず、我が国にも国際社会の一員として責任ある対応を求める声が高まっている。
ところで、我が国の現状を見ると、児童ポルノ事犯の検挙は増加傾向にあり、被害児童の約1割が小学生以下であるなど状況は大変厳しく、こうした状況を反映して、インターネット上の児童ポルノ事犯への対策を求める世論も強くなっている。
内閣府が実施した「インターネット上の安全確保に関する世論調査」(平成20年1月公表)によれば、警察に取締りを要望するインターネット上の犯罪として「児童買春・児童ポルノなど児童が性的被害に遭う犯罪」が最も多くなっている(64.5%)。
一方、インターネット上の犯罪について警察に要望する対策としては、「警察によるインターネット上の監視の充実・強化」(51.0%)及び「インターネット接続業者に対する協力要請」(43.0%)が上位二位を占めているが、インターネット空間の安全確保については、平成20年に事業者にフィルタリングサービスの提供を義務付ける、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(平成20年法律第79号)の成立に見られるように、民間における自主的かつ主体的な取組みにも大きな期待が寄せられている。
このような状況の下、政府では、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」(平成20年12月22日 犯罪対策閣僚会議決定)において、「児童ポルノ対策等の推進」を、「身近な犯罪に強い社会の構築」に関する対策の一つとして位置付け、政府を挙げて取組みを推進することとしたところであるが、中でも警察の担う役割は極めて重要であり、国民の期待に応えるべく、その取組みを強化していかなければならない。
そこで、インターネット上に氾濫する児童ポルノを根絶し、深刻な人権侵害を受け、将来にわたり苦しむ被害児童を無くすための総合的な対策を推進するため、ここに「児童ポルノの根絶に向けた重点プログラム」を策定し、本プログラムに盛り込まれた各種施策の実現を図ることにより児童ポルノの根絶を求める国民の信頼にこたえていく所存である。
1 取締りの推進
氾濫する児童ポルノの根絶に向けた取締りを効果的に推進するためには、児童ポルノの把握・分析能力を更に向上させる必要がある。また、インターネットを利用した児童ポルノ事犯については、犯罪捜査を遂行する上での様々な困難を克服する必要がある。このほか、児童ポルノ事犯は、被害者が児童であることの認定が難しいという問題もある。このような問題を踏まえ、以下の対策を推進することとする。
(1)警察庁が行う施策
@児童ポルノに関する情報分析の強化
インターネット上で流通する児童ポルノが増加している現状を踏まえ、それら違法情報を基にした児童ポルノ愛好者グループの特定・検挙の徹底を図るとともに、悪質なサイト管理者、サーバ管理者までを見据えたサイバー空間の浄化に資する取締りを行うため、警察庁において画像分析班の設置等により情報分析機能の強化を図る。
A外国捜査機関等との連携の強化
国際刑事警察機構(ICPO)、G8ローマ/リヨン・グループ等の国際的な取組みに積極的に参加し、国際児童ポルノベースへの参画等を通じて情報の共有を図るほか、国際的な児童ポルノ愛好家グループ等の検挙に資するため、外国捜査機関との情報交換や国際捜査協力及びそのための調整を行うとともに、連携態勢の強化について検討を行う。
また、東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取対策に関するセミナー及び捜査官会議の拡充等を通じて、日本国民の国外犯事犯検挙のための情報収集を強化する。
B都道府県警察の捜査力向上
高度化及び複雑化を続けるインターネットを利用した児童ポルノ事犯に対応するため、職員を外国捜査機関の研修に参加させるなどして、新たな捜査手法等の導入に向けた検討を行うほか、被害児童が特定されていない児童ポルノ事犯の捜査の迅速化に資するため、被害児童の年齢鑑定手法の在り方について検討を行う。
また、インターネット利用事犯に関する一般的な捜査手法やファイル共有ソフトを使用した事犯を始めとした新たな形態の事犯に関する捜査手法に関する教養を行うほか、必要な装備資機材の配布等に向けた検討を行う。
C共(合)同捜査の推進
児童ポルノ事犯は、広域化及び国際化が著しい状況にあり、効率的な捜査を実施する必要があることから、都道府県警察間における共同捜査及び合同捜査(共(合)同捜査という。)を積極的に推進するため、必要な調整を行うとともに、効果的に捜査を行うための仕組みの検討を行う。
D積極的な賞揚の実施
児童ポルノ事犯の捜査に従事する都道府県警察の捜査員の士気の向上を図るため、インターネットを利用した児童ポルノ事犯の検挙を中心として、積極的な賞揚を実施する。
(2)都道府県警察が行う施策
@児童ポルノ事犯の取締り態勢の強化
児童ポルノ事犯の取締りについては、少年警察部門と情報技術犯罪対策部門、情報通信部門等関係部門との連携に留意し、特にインターネットを利用した児童ポルノ事犯に係る捜査態勢の強化に努める。
また、児童ポルノ事犯は、広域化及び国際化が著しい状況にあり、効率的な捜査を実施する必要があることから、都道府県警察間における共(合)同捜査を積極的に推進する。
各都道府県警察における福祉犯捜査共助責任者にあっては、平素から他の都道府県警察と捜査情報の共有を図るなど連携に努める。
A捜査員の育成
高度化及び複雑化を続けるインターネットを利用した児童ポルノ事犯に対応するため、捜査員に対し、インターネット利用事犯に関する一般的な捜査手法やファイル共有ソフトを使用した事犯を始めとした新たな形態の事犯に関する捜査手法について教養を推進し、その育成に努める。
B児童ポルノ愛好家グループの徹底検挙等
サイバーパトロールや買受け捜査を一層強化するとともに、インターネット・ホットラインセンターから得た情報を積極的に活用することにより、低年齢の被害児童の性的虐待に係る児童ポルノ製造事犯・提供事犯に指向した児童ポルノ愛好家グループの特定・検挙の徹底を図るとともに、悪質なサイト管理者、サーバ管理者までを見据えたサイバー空間の浄化に資する取締りを行う。
C積極的な事件広報及び賞揚の実施
児童ポルノ事犯を検挙した際には、この種事犯の抑止を図るとともに、児童ポルノに関する国民の意識を向上させるため、警察が取締りを強化していることが広く周知されるよう、事件捜査への影響等を考慮した上、積極的に事件広報を行う。
また、児童ポルノ事犯の捜査に従事する捜査員の士気の向上を図るため、インターネットを利用した児童ポルノ事犯の検挙を中心として、積極的に賞揚を実施する。
2 流通防止対策の推進
インターネット上に氾濫する児童ポルノを根絶するためには、被疑者の取締りを始めとする警察の取組みのみでは不十分であり、特に、インターネットを利用した児童ポルノの拡散防止については、民間団体等が主体となった更なる自主的取組みを促進すべきである。
そのため、警察としては、児童ポルノの流通防止に関して以下の対策を推進することとする。
(1)警察庁が行う施策
@民間団体等と連携した流通防止対策
引き続き、インターネット・ホットラインセンターを通じたプロバイダ等に対する削除依頼を実施する。
また、児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体(仮称)の運営ガイドラインの策定やブロッキングに関する技術的・法的課題の整理に関する検討を行う児童ポルノ流通防止協議会が平成21年6月に発足している。同協議会での検討に関係省庁と連携して協力するとともに、同団体に対して捜査やインターネット・ホットラインセンターの運用等によって得られた児童ポルノに関する情報提供を行うなど、児童ポルノの流通防止に取り組む民間団体等と連携した流通防止対策を推進する。
さらに、同団体が作成する児童ポルノ掲載アドレスリストを活用した更なる流通防止対策について検討を行う。
A児童ポルノの流通防止に向けた広報啓発活動
児童ポルノの流通防止のためには、警察や民間団体等の取組みに加え、国民一人一人が児童ポルノを絶対に許さないとの意識を持つことが不可欠であることから、国民に対して、児童ポルノ掲載サイトを閲覧しないこと、保有する児童ポルノを廃棄すること等を関係省庁と連携して呼びかける。
(2)都道府県警察が行う施策
@児童ポルノ流通防止に関する指導等の徹底
インターネットを利用した児童ポルノ事犯の被疑者を検挙した場合等に、当該違法情報が掲載された掲示板等のサイト管理者に対しては、当該違法情報の削除、同種事案の再発防止等について指導等を徹底するほか、児童ポルノ映像を見せる有料サイトに係るプロバイダに対しては、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく勧告を実施するなど、児童ポルノ流通防止に関する指導等を徹底する。
A児童ポルノの流通防止に向けた広報啓発活動
児童ポルノの流通防止のためには、住民一人一人が児童ポルノを絶対に許さないとの意識を持つことが不可欠であることから、住民に対して、児童ポルノ掲載サイトを閲覧しないこと、保有する児童ポルノを廃棄すること等を地方公共団体及び管内の事業者として連携して呼びかけるほか、非行防止教室において、被害に遭わないための教育を行う。
また、非行防止教室やサイバーセキュリティに関する講習等の場において、一般のインターネット利用者から情報提供に基づき、サイト管理者等に対する削除等を依頼するインターネット・ホットラインセンターの取組みを紹介するなどして、インターネット上からの児童ポルノの削除の更なる促進を図る。
(3)被害児童支援の推進
児童ポルノ事犯は、被害児童からの申告がなされにくく、被害が潜在化するおそれがあることから、被害を受けた児童の早期の特定が急務であり、また、当該被害児童に応じたきめ細やかな支援を行う必要がある。このような観点を踏まえつつ、以下の対策を推進することとする。
(1)警察庁が行う施策
@被害児童の発見・保護活動の強化に向けた画像解析
児童ポルノ画像から被害児童を特定し、適確な発見・保護活動を行うため、警察庁における児童ポルノ画像の分析態勢の構築及び分析手法の検討を行う。
A被害児童の心情に配意した聴取手法の検討
被害児童に対する事情聴取に当たっては、被害児童の心情や特性を理解し、二次的被害の防止に配慮しつつ、証拠能力及び証明力を確保する必要があることから、被害児童の心情に配意した具体的な聴取手法について検討を行う。
B被害児童支援の在り方に関する検討
被害児童の精神的ショックは大きく、継続的なカウンセリングのほか、事案発生時の適確な対処方策及び被害からの立ち直り支援について、被害児童の特性に配意した取組みの充実が求められることから、児童ポルノ事犯等の特性を踏まえた被害児童支援の在り方について検討を行う。
C都道府県警察における被害児童支援態勢の強化
少年補導職員や少年相談専門職員等の被害児童の立ち直り支援に携わる職員の能力向上や被害児童からの相談受理態勢及び被害児童へのカウンセリング態勢の整備に関する検討を行うなど、都道府県警察による被害児童に応じたきめ細やかな支援態勢の強化を促進する。
(2)都道府県警察が行う施策
@被害児童の発見・保護活動
更なる被害の防止や立ち直り支援に資するため、捜査において得られた情報を活用するとともに、少年相談の利用を促進するなどして、被害児童の発見・保護活動に努める。
A捜査過程における被害児童の二次的被害の防止・軽減
被害児童が警察の事情聴取による受ける精神的な負担を緩和するため、女性警察官による事情聴取を行うことができるよう、福祉犯捜査能力や少年の特性等の専門的知識を有する女性警察官の育成及び活用を進めるなど、被害児童が捜査過程で受ける精神的な負担の緩和に努める。
B被害児童に対する継続的支援の実施
被害児童の精神的打撃の軽減を図るため、少年補導職員、少年相談専門職員等により、個々の被害児童の特質に応じた計画的なカウンセリングの実施や、家庭、学校等と連携した環境調整等による継続的な支援を行う。
支援に当たっては、関係部門間の連携を図り、継続的な支援が必要な被害児童に関する情報が少年警察部門に集約されるような仕組みを整備する。
Cカウンセリング態勢の充実
被害児童の精神的打撃の軽減を図るための継続的な支援は、担当の職員のみでは対応が困難な場合が多いことから、あらかじめ臨床心理学、精神医学等の専門化を委嘱しておくなど、必要に応じて部外の専門家の助言を受けることができる態勢を整備する。
また、被害児童の症状に応じて、部外の専門家のカウンセリングが直接受けられるよう少年警察部門と被害者支援担当部門の間で緊密な連携を図る。
D遠隔地に居住する被害児童の支援
遠隔地に居住する被害児童について、地域等と一体となった継続的な支援が必要と認められる場合その他の場合で、他の都道府県警察における継続的支援が適当と認めるときは、被害児童の住居地を管轄する警察に継続的支援を引き継ぐなど必要な措置をとる。
〈終わりに〉
本プログラムは、取締り、流通防止及び被害児童支援の三項目を柱として、警察における児童ポルノ対策を記述したものである。警察としては、児童ポルノの根絶は関係主体の連携の下に達成されるものであるという点に配意しつつ、本プログラムに掲げる施策を推進し、もって児童ポルノの根絶に向けて全力を尽くすものとする。 |